電子契約システムが普及し「WEBで送付する」と言うのが当たり前になってきました。それ自体はいいのですが、代わりに頭をもたげてくるのが「1通100円以上」とも言われる電子契約システムの利用料。電子契約システムの多くは従来のシステムと異なり、通数に応じた従量課金性制をとっているのが特徴です。しかし、果たしてそこまでのコストを払わなくてはならない根拠はあるのでしょうか?

ここでは、電子契約システムにおいて重要視される「改ざん防止」と「法律」の観点から、電子契約システムが本当に必要とされるシーン、また電子契約システムを開発したり導入したりする際のポイントについてまとめます。

目次

電子契約システムと従来のPDF署名は何が違うのか?

1 「いつ」「どこで」署名されたかが証明されている

電子契約システムといえば、やはり「いつ」「どこで」署名されたかが記録されている、と言うことでしょう。ただし、ここで言う「どこか」は住所ではなくIPアドレスを記録しているケースもあります(DocuSignなど)。従来のPDFではあくまで、署名をPDFにつけただけ(画像を貼り付けただけ、と言えば良いでしょうか)にすぎません。
またPDF署名の際にはその場で署名してもらうケースもありますが、電子契約システムの多くでは、必ず、メールアドレス宛に署名依頼を送ることになっています。これにより、そのメールアドレスの受信トレイにアクセスできる人(=本人またはそれに代わる人)が署名に携わっていると言うことを証明しています。

この要件では、タイムスタンプでなくてはならない、ということはありません。

2 PDFないし関連データベースに改竄できない形で「いつ」「どこで」署名されたかが残っている

電子帳簿保管法で示されている「タイムスタンプ」と呼ばれる日時が暗号化された文字列(パスワード)を用いてPDFの編集権限もろともロックをかけています。これにより、ほんの少しでもデータをいじったものならその記録が残るようになっています。

ただし、こちらも第三者機関(請求書なら、送り手企業でも受け手企業でもない)が提供するクラウドサービス内で改竄防止が証明できれば、認められます。タイムスタンプは必須ではありません。

3 契約書発送特化した署名欄やテンプレート呼び出し機能、契約書の検索機能を保有している

契約書のテンプレートなどをシステム内に保存し、顧客情報を入力することでそのまま契約者にメール送信できる仕組みが整っているケースが多いです。また、SalesforceやKintoneなどの業務システムとAPI連携(機械的な連携)を行い、顧客管理ソフトで顧客情報を登録→利用者に対してメール送信、までが画面離脱なく一連の操作でスムーズに行えるようになっているのも特徴です。

何でも電子契約システムは避ける。コスト削減と働き方を両立するためのシステムの使い方

これらの機能を有している電子契約システムですが、1通100円〜のコストがかかるのがネックです。契約書の印紙代を思えば安いですが、少額の領収書や契約書など貼り付ける必要のない契約書にまで1通100円のコストがかかる…と言うのは極力避けたいところです。

なお、タイムスタンプ自体のコストはそこまでかからず、とあるベンダー担当者によると1回のリクエストにかかる費用は10円程度の原価となるとのことです。

法的にタイムスタンプの利用が要請されている書類を具体的に把握する

法律上で提出を求められる書類は、全てをタイムスタンプで暗号化しなくてはならない訳ではありません。多くの会社で使用されている会計ソフトはそのような仕組みを整えていませんが、取引履歴を紙に出力できるようにしておくことで仕訳帳などを(印刷などして)税務署に毎回提出する必要はありません。この例からもわかるように、法律ではどの書類が具体的にタイムスタンプで暗号化するように求められているのか?トラブルが発生しやすい書類は何か?を具体的に確認することが大切です。

国税庁に確認をしたところ、電子データでの保存に関しては電子帳簿保存法の第10条施行規則に則る必要があるとのことです。
第10条の施行規則には、以下のように記載があります。

  • 訂正・削除履歴の確保(訂正などの記録がきちんとできること)
  • 相互関連性の確保(仕訳にどの電子帳簿が対応しているかを記録する)
  • 関連書類の備え付け(システムマニュアルを用意しておく)
  • 見読可能性(すぐにディスプレイなどに表示できるようにする)
  • 検索機能(取引年月日、勘定科目、取引金額などで絞り込みができる)

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/05.htm

作業者が何をしたか?が具体的にわか専用SaaSシステムを用意する

電子データで帳簿データを保存しておくもっともシンプルな方法は、電子帳簿保存法に適した専用のソリューションを採用することです。例えば、会計ソフトのFreeeでは、月3980円〜のベーシックプランを使用することで電子帳簿保存法対応を実現することができます。
このソリューションを使用する場合、仕訳と電子データを紐づけることができるため、シンプルな管理を実現できます。

会計ソフトFreeeでは、API連動の機能があります。この機能を用い、例えば社外の電子承認システムで承認がでたもので経理部などでの支払い処理が完了したものを会計ソフトに自動で取り込む(Freee上での仕訳機能で仕訳をAPIでの取り込み後に実施する)ことで、ペーパーレスの管理を実現することができます。

ただし、注意事項として紙で作成されたデータを保存する際には、そのデータが改竄防止されていないことを証明するタイムスタンプを、そのデータがアップロードされて数日以内(表現上は「遅滞なく」)に実施する必要があります(電子的に作成されたものの場合は、検索条件のみになります)

タイムスタンプに変わる改竄防止の仕組み採用(例:ブロックチェーンや鍵暗号化)を検討する

また、タイムスタンプの採用以外の方法としてブロックチェーンを使用することも可能です。法律上に「タイムスタンプ」と明記されていない場合には、編集履歴と金額をブロックチェーンにて記録することで、ブロックチェーンに備わる「後からのデータ修正ができない(編集履歴がブロックチェーン上に残る)」という要件を満たすことができるようになります
あとはブロックチェーンで保存した内容をデータベース(KintoneなどでもOK)でも保存し検索可能とすることで、社内的な管理もスピーディに行うことができます。

会計ソフトがクラウド会計のものではなくタイムスタンプを付与しての帳簿保存にも対応していない、という場合には、この方法を採用するのも1つの手段です。有名なブロックチェーンサービス提供会社としては、AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)やAzureなどのクラウドサーバー事業者があります。

まとめ本当に必要なところにのみ・最小限でシステムを導入してスピーディな働き方改革を実現しよう

いかがでしたでしょうか。会計ソフトを入れ替える…となると大ごととなり、データの入れ替えなどの手間がかかります。また年度替わりのタイミングでしか採用できない、というのもあります。

会計ソフトの電子帳簿保存に拘らず、別の方法(ブロックチェーンやクラウドサービス(Webサービス))の採用を合わせて検討してみてはいかがでしょうか。

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください