
「Kintone、導入したけれど使われていないよね」ー。そういう企業はないでしょうか(かくいう私もそういった企業に当たったことがありました)。
Kintoneはなくてもいい、それでも業務資料の共有には何か使いたい、という方には、Googleスプレッドシートがおすすめです。しかし、Googleスプレッドシートは万能ツールというわけではありません。
なぜGoogleスプレッドシートが優れているのか、Kintoneを利用し続けた方がいいパターンも合わせてお伝えします。
目次
Googleスプレッドシートが優れている点
1. 共有に適したExcelで、携帯からも操作できる

Googleスプレッドシートがいいのは、オンライン編集ができ、かつ、Excel形式である点です。
誰がどのセルを操作しているのか、誰でも視覚的にわかる仕組みが入っていますので、安心感もあります。
なお、このツールは無料で使え、個人のGoogleアカウントでも使用できます。携帯などでも無料アプリが使えるので、その点から大学サークルの運営などでも使用されています。
2. Google App Script (通称:GAS)が使用できること

Googleスプレッドシートのメリットとして、GoogleApps Scriptに言及しないわけにはいきません。このツールは、Excelのマクロと同じような形で使用できるのですが、オンラインツールであるため、パソコンをシャットダウンしている時でも問題なくマクロを走らせることができます(タイマー実行が可能)。そのため、業務自動化のプラットフォームとしての活用も可能です。
注意:RPAに参照させるなら、Kintoneの方がいいと思います。ロボットが誤ってスプレッドシートを編集してしまうリスクがあるほか、表の改変でRPAが動かなくなることがあるためです。
またRPA停止リスクを忌避し、誰も触れない管理表ができてしまうリスクもあります。
3. Google Driveが使用できる
Google Businessを契約すると、1人30GB程度のストレージがついてきます。外部とのデータ共有・共同ワークスペースに活用できます。
Kintoneはあくまでシステム構築アプリのため、ストレージはついてきません(表に埋め込んだ写真などを保存することはできますが、フォルダにファイルをドラッグ&ドロップ…はできません)
Google スプレッドシートになくて、Kintoneにないもの
では、KintoneではなくGoogleスプレッドシートの方がいいのか、というとそうでもありません。
実際に両ツールの開発・提案をおこなってきた立場から、下記の2点が重要だと考えております。
レコードごとの編集権設定がある

GoogleスプレッドシートはExcelなので列の追加/行の追加が自由にできてしまいます。そのため、フォーマット上で列の追加/行の追加をブロックするのが少々苦手です。
レコード条件に応じて編集権を変える(例:自分のレコードを編集する)などの制御を実装するには、GASでのプログラミングが必要になるケースがあります。
この点、Kintoneでは編集権の設定が設定画面からサポートされており、安心して採用できます。
もう一点追加で申し上げると、Kintoneで作ったデータは綺麗なデータ活用しやすい表となる(入力時の入力値制御がきちんとされている)ケースが多いですが、Googleスプレッドシートではそうとはなりません。これが、次に述べるメリットにつながってきます
連携ツールが豊富(で、ソリューションベンダーも多い)
Kintoneはレコードベースで外部ツールとの連動ができるようになっています。例えば、営業案件を入力したら、その案件に合わせて電子契約書を出力する…といった動作です。これはレコードデータがしっかりとした形式で格納され、REST API形式でコンピュータにわかりやすい形でデータ連携が厳密にされるためです。これは、Googleスプレッドシートにはなし得ない技です。
安価なプランでも画面編集ができる
KintoneのCMでも流れていますが、画面での入力を想定しているため、標準で入力画面がついてきます(また、画面を設計すれば自動的にフォームも生成されます)。Googleスプレッドシートの場合、これを実現するにはGlideなどのサービスを用いて開発していることが条件となり、制約が出ます。
業務基幹システム、DX構築なら、Kintone+外部サービスの組み合わせを
KintoneもGoogleスプレッドシートも優秀なシステムです。しかし、基幹システムとして採用するならKintoneをお勧めします。複数人が触るシステムで「誰が触った」かがわかること、「壊れない」ことは必須条件で、Googleスプレッドシートはその要件を満たさないためです。
ただし、基幹システムまではいかない以下のような要件では、Kintone(や後述のFilemaker)よりもGoogleスプレッドシートは優れていると言えるでしょう。
- 一時的なプロジェクトで使用する管理シート(マクロを組まないケース)
- Excel関数を用いる場合
- レコードの権限などはあまり関係なく、誰もが書き込める「メモ帳」のような扱いのファイルの場合(変更履歴や削除履歴がなく、誰かが間違って削除しても全員に聞けば確実に復旧できるもの)
おまけ:FileMakerはどうなのか
似たサービスにFilemakerとUnitBaseがあります。
これらのツールについても、合わせて紹介いたします。
Filemaker
Filemakerは現在はAppleが買収している、Kintoneとよく似たサービスです。
ポイントは、データが画面と表とで1対1で結びつくということです。複数画面でデータを呼び出す際などはデータのリレーションを適切に管理する必要があります。
複雑なアプリケーションを組む際には、テーブルエイリアスを作成し、画面に複数の表を紐づけることができます。しかし、テーブル関連図を出力するとカオスになるケースが多く、複雑なアプリケーションの構築には注意が必要です。
Kintoneに比べ薦められるポイント
オンプレミス(自社保有サーバー)で動く
AWSなどのパブリックホストに配置してもしっかりと動きます。またMacをホストとして使用することもできるので、クラウドを契約するほどではない場合にはGoodです。
画面設計が柔軟(ボタンデザイン/検索ボックスの配置など、自由自在にできUIにこだわれる)
パーツをドラッグ&ドロップで画面に落とし込んで開発ができます。またボタンに対してマクロを「スクリプト」という形で設定でき、こちらもノンプログラマーの方に重宝されています。
外部データベースが使用できる
データスキーマに外部DBも使用できるので、基幹システムに少し足したい(データベースは基幹システムをそのまま使いたい)というニーズにも対応できます。
薦められないポイント
iPhone / iPadしかモバイル端末が対応していない
公式アプリはiPhone / iPad用にしかモバイルでは提供されていません。Windows・Mac版は共にあるので、PCを使う業務ではOKです。
またWEBアプリでよければ、WEB Directという機能を用いることで、Android端末などでアプリを使用することもできます。
設計を間違えると保守性が落ちる
テーブルをたくさん作ってエイリアス貼りまくるぞ!とかやると、後で手をつけられなくなります。ER図出力機能などもあるといえばあるのですが、、
UnitBase
Kintoneを自社保有のサーバーにインストールするイメージで使えるサービスとして、UnitBase(ジャストシステム社提供)があります。
- クラウドが使えない企業
- ネットワーク境界防御しかセキュリティがない企業
- 1人1人にライセンスを発行できない場合にはKintoneに比べ安価
- 長期的に使用するには、価格面でメリットがある
といったメリットがあります。