電子レシートは、ここ数年で確実に存在感を増している。
環境配慮やペーパーレス化の文脈だけでなく、データ活用・顧客接点の高度化という観点からも注目されている領域だ。
日本国内では、代表的な電子レシートサービスである スマートレシート が会員数・発行枚数ともに拡大を続けており、対応店舗数も増加している。
消費者側でも、スマートフォンで履歴を確認できる利便性や、家計管理アプリとの連携などを理由に、一定の利用層が形成されつつある。
一方で、現時点の電子レシートは「統一された社会インフラ」というよりも、「サービスベンダーごとに分断された仕組み」と表現した方が実態に近い。
目次
ベンダーごとに独立する電子レシート基盤
現在の電子レシートは、
- 小売店独自アプリ内での提供
- 電子レシート専業ベンダーのプラットフォーム内での提供
という二極構造になっている。
たとえば スマートレシート や ログノート のような電子レシートベンダーが間に入り、POSデータと連携して電子化するモデルが主流だ。
重要なのは、フォーマット間の連携が存在しない という点である。
A社の電子レシートとB社の電子レシートは統合されず、消費者が横断的に管理できるわけではない。結果として、「電子化されたが、プラットフォームは分断されている」という状態になっている。
POSメーカーの立ち位置
レジメーカーの中には電子レシートをオプション提供しているところもあるが、その色合いは薄く、多くは各小売店のアプリ内に埋め込む機能として提供され、顧客の囲い込み効果を狙っているものがほとんどである。具体的にはPOSメーカーが前面に出て電子レシートを提供している印象が強いのは東芝テックのスマートレシート 程度であり、それ以外のメーカーは黒子として裏側に回っているケースが多い。
つまり、電子レシートのエコシステムは
POSメーカー × 小売アプリ
という構造で成立している。
電子レシートとレシートキャンペーンは別物
ここで混同されがちなのが、「電子レシート=レシートキャンペーン基盤」という誤解である。
実際には、多くの小売店ではレシートキャンペーンは電子レシートとは別の文脈で運用されている。
現在主流なのは、
- POSデータを基盤に
- MA(マーケティングオートメーション)的に
- アプリクーポンを配信する
という仕組みであり、レシートそのものは直接的には関与しない。そのため、電子レシートを提供していないスーパーマーケットでもアプリクーポンは相当数提供されているし、それらでもきちんと各顧客ごとにカスタマイズされたものが提供されている(具体的なものとしては、データコムのD3などがあげられる)。
つまり、
- 電子レシート → 顧客利便性・データ蓄積
- レシートキャンペーン → MA戦略の一部
という分離構造になっている。
小売以外からのアプローチ ― レシート買取サービス
もう一つの潮流として、レシート買取サービスの存在がある。
これは消費者がレシート画像を投稿し、ポイントなどと引き換えるモデルだ。
買取サービス側は集めた購買データを分析し、メーカーに対して購買動向レポートやマーケティング支援を提供している。
つまり、電子レシートが「公式ルートのデータ活用」だとすれば、レシート買取サービスは「二次流通型のデータ活用」と言える。
この構造を見ると、レシートは単なる取引証憑ではなく、
「購買データの一次ソース」
として経済価値を持つ存在へと変化していることが分かる。
現在の電子レシートは「過渡期」にある
現状を整理すると、電子レシートは確実に拡大しているが、
- ベンダーごとに分断されている
- 標準フォーマットがない
- マーケティング活用は別レイヤーで動いている
- POSメーカーは裏方であることが多い
という「過渡期」特有の状態にある。
今後の焦点は、
- 標準化・横断管理の実現
- 決済連動型の自動発行の高度化
- 電子帳簿保存法など法制度との接続
- 中小店舗への導入コスト低減
といった点に移っていくだろう。
まとめ
電子レシートは「紙をなくす仕組み」ではなく、購買データをめぐるエコシステムの入り口として設計しようという動きがあるが、現状は「紙がなくなる」というメリットのみで動いており、顧客側にとっての導入メリットは少ない。それは、サービスベンダー単位で閉じた構造となっており、各小売店のCX設計に閉じ顧客満足度やレジオペレーションの効率化といった側面に閉じている状況であるのが実情だ。
クレジットカードの総額では足りない付加情報がどのように活用され、それがどのように顧客目線で満足度につながっていくのか。レシートは個人レベルで見れば趣味嗜好が判然とする歴とした個人情報だ。売り手側の営利目線が強すぎると、この施策は広まっていかないように感じる。
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