HTML形式で発行される領収書。近年のWEBサービスのトレンドだったりすることもあり、Amazonや楽天など多くのネットショッピングサービスにて採用されています。2022年1月から始まる電子帳簿保存法では、これらの領収書はどのようにして保管すればよいのでしょうか?そもそも、電子保存はしなくても良いのでしょうか?

目次

電子保存は「必要」。原則は送信されてきた形式での保存だが、HTMLでの保存が難しい場合にはPDF保存を

電子帳簿保存法改正にあたっての一問一答集が国税庁ホームページに公開されています。その内容を見ると「従業員が立て替えたものの領収書の保存は必要ですか?」との問いに「取引時(仕訳時)に速やかに行う必要はないが、継続して監査に耐えられるように電子データで本社などで管理する必要がある」との回答が掲載されています。レシートと一緒にAmazonから印刷した領収書を添付して経費精算するフローが確立している企業においては、そのオペレーションと「並行で」領収書の電子保存が必須となります。

また、HTMLでの保存が難しいAmazonなどの領収書については、内容が確認できるようにPDFで保存すれば問題ないとのことです。ただし、PDFでただ保存するだけではなく「事務処理規定の設置」「外部の改ざん不可のサービスの利用」「使用している電子計算機等の仕様書の備え付け」「タイムスタンプ付与」のいずれか、が必須となります。

ここで留意していただきたいのが「タイムスタンプ」が唯一の手段ではなく、代替手段が認められている、ということです。そもそもタイムスタンプはその時点での存在を証明するものではありますが、一旦アップロードなどされた証跡が削除されたことの証明にはならず、厳密に言えば真実性に欠けるのではないかと(プログラマである私としては一意見として)思います。

双方が厳重に保管している契約書などと異なり、対象範囲が広く膨大であること、そしてさまざまな事業者が入り組んでいることから、この部分に関してタイムスタンプの付与が義務になることは考えにくいのではないかと思います。

※もし将来的なタイムスタンプ付与の義務化が怖いようであれば、第三者のクラウドサービス、の利用を検討してみるのはいかがでしょうか。タイムスタンプ付与が義務になった際も(事業者が)情報収集をして提供するでしょうし、継続してのサービスのためにタイムスタンプ対応を代行していただけるケースも多いでしょう。

訂正・削除履歴に厳しい第三者クラウドサービス

電子帳簿保存法に適した第三者サービス(及びタイムスタンプ)にはどのようなものがあるのでしょうか?

その1:経費精算システム

経費精算を効率化するシステムです。電子マネーの履歴読み取り→一括申請の仕組みを取り入れている会社もあり、交通費精算を効率化することができます。

1ユーザー400円〜700円ほどで導入できます。ラクスが提供している楽々精算などはCMでも有名です。
ただし、経費精算に特化しているため、ワークフローなどの利用には別途システムの導入が必須となります。

その2:ワークフローシステム

社内稟議などをWEB上で実施するシステムです。金額による承認ルート固定などをシステム的に実現することで、想定されない(ルール違反の)承認ルートによる承認を防ぐことができます。

また、承認の証跡をオンラインで検索できるため、後で「承認書類を無くした…」であるとか「あの支払いは承認とったって言っていたけど、本当に承認とったとは思えない」といった際の内部監査にも役立ちます。

ただし、多くのワークフローシステムは電子帳簿保存法対応を謳っていません。訂正削除ができるものも多く、既存のワークフローシステム単体で対応することができるかどうか、は注意が必要です。

※私が所属していた会社は不動産会社ですが、リモート勤務をきっかけに電子承認システム( https://scopeapps.net/ )を入れました。面倒臭いと不評でしたが、最終的には「過去の承認資料をすぐに呼び出せて『あの時なぜその流れになり、この製品を入れたか?』がわかり助かった、という声を非常に多く聞きました。
検索性と保存の完全性という電子化の恩恵を非常に強く感じたシステム導入でした。

その3:タイムスタンプ付与保存サービス

タイムスタンプ発行会社が提供しているストレージサービスが該当します。月額20,000円ほどで利用でき、書類のアップロードとタグづけ機能がついています。

簡易検索機能も付いているので、電子帳簿保存法に最小限で対応したいという場合にはおすすめです。ただし最小限ですので経理部以外の部門の業務への対応はできないですし、アカウントも実質的に経理部しか保有しない形となるケースが多くDXには繋がらない(ただ作業が増えるだけ)のケースが多くなりまそうです。

その4:請求書受取代行サービス

請求書受取代行サービスが近年増えてきており、BillOne( https://bill-one.com )などのサービスはCMなども行なっています。

請求書をただ単純にデジタル化するだけではなく、請求書に記載されている明細を1行ずつ、全ての行をOCRし会計ソフトに取り込める形に整形するところまで行うため、経理部などの業務の圧縮に非常に効果があります。

ただし、費用が月額10万円を超えるケースも多く、導入にはやはり一定程度のハードルがあるのが実情です。

また、経費精算システムのみの対応のため、ワークフロー機能などは他社の機能を頼る形となります。

ピンチはチャンス。電子帳簿保存法をきっかけに社内業務全体の電子化を

電子帳簿保存法は急遽発表された変更で、しかもその内容が大半の企業に影響するということで多くの企業より困惑する声が聞かれます。しかし、デジタル化をするきっかけもなく今までの業務フローをひたすら踏襲するだけで見直しまでは至らなかった、という実情もあったのではないでしょうか。
デジタル化にはあまり理解のない企業でも通用する「法律が変わって対応しないと税金を大量に逆に取られてしまう」という理由が今回はありますので、今回の変化をチャンスと捉え、業務のスリム化と分析データの蓄積に取り組んでみてはいかがでしょうか。

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください