短期間の電話受付窓口の構築として近年よく利用されるサービスが「AmazonConnect」というAWSが提供するサービスです。電話がつながった瞬間に「ピロリン」という音がなって繋がった…という経験のある方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、Amazon Connectが何が優れているのか?そして今までのクラウド電話と違う点についても触れていきます。

目次

Amazon Connectの特徴

ポイント1. 大手3社のクラウド事業者で唯一「そのまま使える」クラウド電話を電話番号と一体で提供している

AmazonConnectの最大の違いは、クラウド事業者大手三社(GoogleCloud、AWS、Azure)のなかで唯一「電話番号をオンラインで取得でき、電話クライアントアプリもついている受電環境を瞬時に構築できるサービス」であることだと思います。AzureはOffice365に、GoogleはG-Suiteにそれぞれ企業内コミュニケーション用のツール(Teams、Duo)がありますが、それらのツールは電話窓口に最適化されていません。また、AWSでの構築の場合はワンクリックですが、その他のクラウドサービスの場合は割高な利用料を支払った上、PTSN接続などの複雑な設定を行う必要があります。

クレジットカードを登録すれば(請求代行などを使えば、請求書払いもできる)一瞬で使用できる状態にまで持っていける、という手軽さが最大の売りだと思います。

また、クラウド事業者が提供しているとのこともあり、通信環境に関しても問題がないと感じます。

ポイント2. WEBブラウザだけですぐに利用できるシステムである

AmazonConnectの場合、WEBブラウザ上で音声・動画通信を行う(WebRTC)技術を採用しています。そのため、エンドユーザーがPCにヘッドセットを接続することにより、特に複雑な設定もなくすぐにコールセンターシステムをパソコン上で使用することができます。Skypeなどのように、デスクトップに別途アプリをインストールするのが標準となっていません。

この点で、電話のクラウド提供で有名なTwillio社とも明確な違いを設けています。Twillio社も同様の方式で電話をとることも可能ですが、Twillioの場合はSIPの使用が標準的となっており、自分で電話に使用するソフトウェア(ソフトフォンと呼ばれます)を購入する必要があります。環境構築の手軽さは、システム提供者からすると大きな魅力の1つです。

ポイント3. 今後多くのサービスと繋がりそうな雰囲気がする

なんと言っても連携しているサービスが多いのがAWSの特徴。Lambdaと呼ばれるサービスで簡単なプログラムを実行し、スピーディに音声応答システムに機械が生成した答えを話させることができます。つまり、IVRの構築やその他複雑な音声を使用してのルーティング(1を押したらAに、2を押したらBに繋がる)が容易にできます。
また音声の自動文字起こし機能も使用できる ※日本語はまだ未対応。2020年4月現在 ので、研修素材などの作成にも大きく役立ちます。

なお、現在はsalesforceやZendeskと連携できるようになりました。これからも利便性の高いツールとの連携が期待されます。

AmazonConnectの問題点

SIPで使えない

現在のところ、SIPフォンでの応答ができないように見受けられます。これはすなわち、デスクフォンを使用できないということを意味します。例えばモバビジというサービスがありますが、こちらの場合はPANASONICの以下のような電話機を使用してPCなしで通常の固定電話きの要領でクラウド電話を使用することができるようになっています。

また、WebRTCはブラウザで通信するので、ChromeなどのWebブラウザがフリーズした際にブラウザを再起動すると電話も同時に切れてしまいます。また、音声が途切れる際に通信機器で設定できるQoS(パケット優先通信設定)が利用できないのも大きな問題の1つといえそうです。

Zapierやその他クラウド連携サービスとの相性がよくない

AmazonConnectはコンタクトセンター構築サービスであり、個人が気軽に試して普段使いするシステムではありません(※ここでいう個人は、一般人というよりは技術に詳しいギーク系の個人ユーザーを指します)。そのためか、システム自動化によく使われるIFTTTやZapierなどのシステム、またmackerelやその他監視ツールでの音声通知などにはTwillioがよく利用されます。Amazon Connectで同じことをやろうとすると、プログラミングが必要になります。

現状では、特にノーコードで使用する…という面ではTwillioに軍配があがります。

コールフローの作成画面が優しくない

コールフローの作成画面は今までのPBX(会社においてあるビジネス本種装置)などに比べると格段にいいとはいえ、Twillioなどに比べるとやはり操作性の低さが目立ちます。

電話をプログラミングインターフェースに投げる、と言った際にAmazonConnectではLambdaなどでプログラミングインターフェースを逐次作成しなくてはならないのですが、Twillioではそのような機能が最初からついています。また、分岐などの表示の仕方も全体的にTwillioの方がスマートに見えます(この辺りは、個人の主観もありますが)。

まとめ: Amazon Connectは短期間のコンタクトセンター(コールセンター)の構築にはお勧めできる。が、細かいことをやりたいのであれば現状Twillioをお勧め

多くの会社でコンタクトセンターを作成すると言うと、一昔前はTwillioの構築が多かったのですが現在ではAmazonConnectの使用が多いように感じます。しかしながら、操作性や他のシステムの連携性を検討することなく、惰性で「すでにAWSを使っているから」とか「クラウド事業者だから安心」と考えることなくサービス選定をしてしまっていることはないでしょうか。

2019年9月には他でもないAWSのとある場所で空調の故障によりサーバーがダウン。多くのネットゲームや企業システムに影響が出たことが話題となり、複数のクラウドサービスの利用などにより耐障害性を高めると言った方策が議論されるようになったのは記憶にまだ新しいです。

ただし、電話を受けるアプリのインストールも少なく、在宅勤務者に電話だけを用意したい!というニーズの際にはAmazonConnectは最も安価で安定したサービスとなると言えます。そのコンタクトセンターが長期的に使われるものなのか?将来的に複雑なルーティングを入れるのか?を検討することで、AmazonConnectかTwillioか?という議論ではなく、もっと従業員が扱いやすい真の意味で役立つ電話システムを選定することができるでしょう。

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